樹齢千年のヒノキを使えば、建物は千年もつと言われています
法隆寺には千数百年前の建物が残っていて、飛鳥時代の大工たちが木と建築に取り組んだその心を今も伝えています。
『木の強さやクセを見抜けないと丈夫な建物はつくれない』
と、代々の棟梁は言います。
代々伝えられた口伝には、現代の建築が忘れている「木の心を知る」というものがあるそうです。
木と肌で触れあう職人の知恵があり、その知恵が千年も続く建築物の元となっています。
単純にヒノキが長持ちする、ということではないのです。
「木を買わず山を買え」
という言葉があるのを知っていますか?
同じ山で育った木で一つの塔をつくり堂をつくれという教えです。
他にも、神社仏閣を建てる宮大工の口伝には
「木は生育の方位のままに使え」=「山の南に生えていた木は塔を建てるときに南側に使え」
「堂塔の木組は木の癖で組め」=「右ねじれと左ねじれを組み合わせれば、部材同士が組み合わさって動かない」
というものがあります。
木曽の木と、奈良や四国などの木を一緒には使いません。
いくら同じ種類の木でも環境が変われば性質も微妙に違ってくるためで、その性格の違いがやがては建物に狂いやひずみを生じさせるからです。
単に「建築材料の一つ」として木を見るのではなく、
深い山の中で雨風にさらされて呼吸してきた生命ある木として用材を見極める力量がないと、一人前の大工や棟梁にはなれないのです。
一方、「木を知るには土を知れ」という言葉もあります。
木を伐るにも時期があります。
「木6竹8」といわれ、旧暦の6月に木を、8月に竹を伐るのが良いそうです。
6月は太陽歴では今の8月。
この時期を過ぎると木は越冬の準備をし始めます。
8月は養分を十分に吸いとってこれから実り出すという時に、切り出します。
旧暦の8月は今の10月にあたり、闇の日に伐るそうですが、それは月夜の夜に伐ると虫が入るからだそうです。
なかなか「深い」。。。
峠の木は強いし中腹の木は適度によい。
谷の木は柔らかい。
山の向むきによっても、北側に生えた木は柔らかいから造作材に、
南側の日当たりのよいところで育った木は材質が非常に堅いために柱にとなります。
同じように見える木々も一本一本に微妙なクセをもっています。
このクセを大工たちは「木の心」と捉え、
木を殺さず木のクセや性質を生かし組み合わせて、はじめて何百年もの風雪に耐える建物をつくる基本になります。
これを先述した「堂塔の木組は木の癖組」といいます。
いつも同じ方向から風が吹く所で育った木は、その風に対抗するように働く力があり、
そのクセを生かして上手に組むということで、右ねじれと左ねじれを組み合わせれば、部材同士が組合わさってしっかりするからです。
右ねじれと右ねじれを組めば、その塔は長い年月の間に右へねじれていきます。
人間も同じだなと思います。
同じように見える人間も一人一人が微妙に違います。
そのクセや違いをうまく組み合わせて、社会を構成していく。
本質は同じです。
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