人間は泣きながら生まれてきます。

でも、新生児が「おぎゃぁ」と泣いているとき、実際には涙を流しているわけではありません。

私たちが涙を流すようになるのは、1歳ぐらいになってからです。


赤ちゃんは身体的ストレスによって泣きます。

単純に、泣くことで不快なストレスを解消しているのです。


大人も、ストレスが爆発して大声を出す人がいますね😅



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赤ちゃんは泣くことで親や周囲の大人がストレスを処理してくれることがわかると、

泣くことに「ストレスの表現」という意味も加わります。

泣くことで理解してもらう、というコミュニケーション手段の1つになるのです。


ところが、成長とともにこの手段は抑えられていきます。

「お兄ちゃんなんだから泣かないのよ」

「そんなことで泣くなんておかしいでしょ」

「我慢しようね」

と言われ、泣くことで大人にストレスを解消してもらおうとするのではなく、言葉で伝えることを覚えていきます。

こうして、徐々に「ストレス泣き」を卒業します。


 


その次に流す情動の涙は、悔し涙や悲しみの涙です。

ケンカや勝負事で負けた。。。

自尊心が傷つけられた。。。

好きな人にフラれた。。。

ペットとのお別れ。。。

抑えきれない感情が涙となって溢れます。



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そして、大人になって流す涙が「感動の涙」です。

感動の涙は、幼い子どもは流すことがありません。

なぜなら、感動の涙のベースにあるのは「他者への共感」だからです。

映画やドラマを見て泣いたり、スポーツ選手の頑張っている姿を見て泣いたりするのは、登場人物や選手に共感し、喜びや悲しみを一緒に感じているから。

経験が少なく、相手の気持ちを想像できないうちは、この涙を流せません。


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「情動の涙」の中でも、この「感動の涙」こそ、ストレスを流すのに最もいい涙です。

というのも、情動の涙を流すには一度は脳がストレスを感じる必要があるのですが、

そのストレスが自分自身のことである場合、悲しみや怒りに耽溺してしまいやすく、涙を流してもスッキリできないことがあるからです。


たとえば、大好きな人との別れを思い出して泣くという場合。

涙を流すこと自体、ストレスを解消する効果はあるのですが、思い出すことで別れのストレスを再度味わうことになり、その悲しみを引きずってしまうかもしれません。

ですから、積極的に泣いてストレスを解消するという意味では、他人の経験に共感して泣く「感動の涙」が一番いいのです。





ストレス解消のメカニズムについて、一般的に「ストレス状態」とは、「交感神経」の緊張が高まっている状態のことを言います。

自律神経には、交感神経と副交感神橙の2つがあります。

交感神経は、身体や頭を活発に活動させるのに対し、副交感神経は身体を「お休みモード」にし、リラックスさせる役割があります。






交感神経が活発な状態というのは、いわば「戦闘モード」。

身の危険を感じると、身体がこわばったり、心臓がドキドキしたりしますが、これは交感神経が活発になって身体に司令を出しているから。


ということは、交感神経優位から副交感神経優位へ、スイッチを切り替えるようなことができればストレス解消になります。

ところが、このスイッチ切り替えはそう筒単にはできません。





人間は、起きている間は交感神経が優位に働いており、一度高まってしまった交感神経の緊張を緩めることは難しいのです。

簡単なのは寝てしまうことです。

寝てしまえば、副交感神経が活発になるので、交感神経の緊張は緩みます。

とは言え、すぐに寝ることができないときはどうするか?




実は、起きている状態のまま、副交感神経を活発にすることができる唯一の方法が、涙を流すことなのです。

なぜなら、涙を流す器官である「涙腺」は、副交感神経のコントロール下にあるからです。

交感神経が高まってストレス状態にあったものが、そこから解放されて涙が流れ、リラックス状態へ移行します。

つまり、「情動の涙」は、交感神経から副交感神経へのスイッチのような役割を持っているのです。







交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまうと、なんとなく体がだるい、なかなか寝付けない、起きている間もぼ〜っとしているなど、さまざまな不調が出てきます。

情動の涙を流して、自律神経のスイッチングをすることでバランスが整い、こういった不調が軽減されます。

また、免疫システムは副交感神経の支配下にあるため、

情動の涙を流して副交感神経を刺激することで活性化できます。