「舌で味わう」といいますが、食べ物の味は舌を中心として、口の粘膜で感じ取られます。

そして舌以外で、味覚は味わえません。
 
そんなこと、ですが、舌だけが味覚をキャッチできるのは不思議です。




こうなると「なぜ?舌だけが?」と追求したくなります。

音を聞くのは耳、光を見るのは目、も同様です。

体は外の世界を知覚するアンテナがあり、味覚は口の中の舌という感覚のアンテナだけによってキャッチされます。

普段は、あれこれ食べ物や飲み物を味わいますが、その時舌という感覚器官の存在を意識しているでしょうか? 

口の中で舌を動かして、これが舌で味覚器官だと改めて意識してみます。

意識するとしないとでは、だいぶ感じ方が変わります。




舌という部位については、進化の観点から説明をすると、なぜ口のなかの舌が、味覚器官となたのでしょうか?

そもそも論として、味覚は、舌だけでなく、全身にあったという事実があります。



ミミズのような下等動物では、この味細胞が触細胞と同じく全身に散らばり、

身体中で味をきき分けることができます。
 
ところが、脊椎動物では、水中で生活する魚類の場合、

これらの細胞はもっぱら顔面に集まり、

水に溶けた餌の味をここで受け取るようになります。
 
しかしこれらの味細胞は、動物の上陸とともに、

乾燥した皮膚の表面から、湿った口の中に一斉に移動し、

ついに味はここでしかわからなくなりました。
 

 

こういうことで口に中の舌が味覚の感覚器となったのですが、この舌について、

「舌は喉から出た手」

と言われています。

なぜ舌が手??

手と同じ??




舌は口腔の底が盛り上がった筋肉の塊を、口腔の粘膜が覆ったものです。

この筋肉は、首の前面の筋肉の続きで、手足と同じ筋肉です。
 
 


舌は感覚器官でもあり、「喉から出た手」でもあります。

「喉から手が出る」という慣用句があります。

欲しくてたまらない様子、を表す言葉。

舌が手と同じ筋肉であることをわかっているかのようです。

3本目の手。


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ところで、人の成長から舌を眺めてみます。

母乳が美味しいものではないことは確かですが(味はもう覚えていませんが)、

生後間もない乳児が舌を出すことはありません。

その後、生後 4 ヶ月頃に定頸し、やがて離乳食になりますが、口に押し込まれた離乳食を摂取しようにも舌先で口外へ押し出してしまいます。

当初乳児はそれに対してかんしゃくを起すものですが、徐々に学習し、離乳食から断乳へと進んでいきます。

生後1歳となり二足歩行が開始される頃に「咀嚼と嚥下」を学習し獲得していきます。

そして同じ頃に「言葉」を発し始めます。

つまり、舌が動かせないと言葉を話すことはできません。





私は人の体を触って、自然な状態、健康な状態に戻すことを仕事としていますが、

『舌』は人間にとって非常に大きなウエイトを占めます。

運動といいえば、腕や太もも、腹筋を鍛える、なんて思い込んでいますが、


舌も立派な、かつ超大事な筋肉です。


第3の手、いや、元々3本あるうちの1本が舌だと考えたほうが良さそうです。