昨日「日本は水の国」といった記事で少し触れた「言葉は文化」ということについて。



言語体系というものは、文化によって大きく異なります。


日本語はご存知のように、

「やまとことば(和語)」「漢語」「外来語」


から成り立っています。

「漢語」は、愛とか忠、孝行といった、やや抽象的な概念を表すのに利用します。

つまり、もともとの「やまとことば」には、そういう抽象概念を表す言葉がありませんでした。
 


 

擬音語・擬態語は、「やまとことば」です。

ずっと昔から日本人が愛用して来た言葉で、とても感覚的・具体的という特性を持っています。

こういう言葉が日本語には抜群に多く、一説では英語の5倍も豊かとも。

同じ漢字を使う言語の中国語に比べても抜群に多いのです。

ということは、日本人というのは、具体的で感覚的な物を認識しやすい、ということになります。



私の世代はリアルタイムではないですが「長嶋茂雄さん」は国民的な野球選手で、野球ファンでないひとにも親しまれていますよね。

長嶋さんは、擬音語・擬態語満載の話し方をするのは有名です。

「ピシッとして、パーンと打つ」とか「腰をグーッと、ガーッとパワーで持っていって、ピシッと手首を返す」など。
 

 

擬音語・擬態語を多用して、日本人の感覚に訴える。

選手にとっては「腰を30度ひねって」などという分析的な言い方の方が実際は分かりやすいのかもしれませんし、説得力も増すのでしょうが、

擬音語・擬態語で感覚に訴えられるとなんとなくわかった気がしてしまう笑

ましてや、選手ではない一般の日本人にはものすごく分かった気がします。

擬音語・擬態語の魔力です。




擬音語・擬態語に注目すると、その時代にどのような物事が普及し、どんな価値観が世の中に人気があったかが透けて見えてきます。
 

例えば、40年くらい前だと「がたぴし」という言葉がたくさん出てきます。

当時は木造家屋だったからです。

「がちゃーん」という牛乳瓶や窓ガラスの割れる音も多くありました。

しかし、今は牛乳のほとんどが紙パックになりガラスが割れる場面がほとんどなくなりました。

だからそれらを表す擬音語・擬態語の使われることが少なくなります。
 

一方昔は使われなかった擬音語・擬態語で、現在使われる語にどのようなものがあるでしょうか?

代表的なものは電子音。「ぴっ」「ぴぴっ」「ぴんぽーん」「ちん」。

携帯電話、電子レンジなどの電子家電製品など、身の回りには電子音を発するものがたくさんあります。

擬音語・擬態語の変化を見ると、その時代に、どのような物が普及していたのかがわかります。



 
さらに、擬態語はその時代の価値観を表します。

昔は「秘めた恋」に価値を見出していたので「頬をぽーと赤らめる」などと、恥じらいを表す擬音語がたくさん出現していました。

ところが現代は「びびびの恋」のように、開けっぴろげで直接的で刺激的な恋愛観の方が時代の好みに合っています。


 

私はお酒を飲みませんが、お酒の飲み方にしても静かなことが好まれた時代には、「ちびりちびりお酒を飲む」と言いました。

今では遠慮なく豪快な飲み方やお酒の種類も増え「がぶがぶ」飲み、
「ぶっはー」なんてやっています。

その時代、何を良しとしているかが、擬態語に表れます。

擬音語・擬態語に注目すると、土地や国の特徴、ものの考え方・感じ方、時代の推移など、実にさまざまなことがわかります。

この数年でまた世界観や価値観も変化しています。

どんな擬態語があるか考えてみましょうか。